映画『ヴァレリアン 千の惑星の救世主』 | オフィシャルサイト

PRODUCTION NOTE PRODUCTION NOTE -プロダクションノート-
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原作からスクリーンへ:
飛び立つ『ヴァレリアン』

リュック・ベッソンは少年時代、「ヴァレリアン」というコミックシリーズに夢中だった。「10歳の頃、たまたま見つけた雑誌「ピロット」で「ヴァレリアン」を読み、その日からローレリーヌに恋をして、ヴァレリアンになりたいと思うようになった。当時は1970年代。悪い奴らをコテンパンにやっつける女の子を見たのはあれが初めてだったよ」

映画監督となったベッソンは『フィフス・エレメント』のデザインを「ヴァレリアン」の原作者でもあるメジエールに依頼。「彼からは『どうしてこの映画を作っているんだ。ヴァレリアンを作るべきだろう!』って言われたよ」とベッソンは笑う。「でも当時の技術では、あのコミックの世界観を再現するのは無理だったんだ」

ベッソンが決心したのは、ジェームズ・キャメロンに招かれて『アバター』のセットを訪問した時だった。「あの映画の技術革新のおかげで、限界は自分の想像力の限界だけになった。いつの日か、自分もSF映画をもう一度作ろう、『ヴァレリアン~』を作ろうと決めたんだ」

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我らがヒーロー探し

デイン・デハーンに初めて会った瞬間、ベッソンは子ども時代にインスパイアされたヴァレリアンを見つけたことを確信した。「レストランで微笑みながら『ハーイ』と言った彼を見た瞬間に決めた。声のトーンや目の輝きや笑顔に『ヴァレリアンそのものじゃないか』と思ったんだ」

撮影の7カ月前から身体を鍛え上げたデハーンは、向こう見ずな捜査官であると同時に救いようがないほどのロマンチストである役柄に惹かれたという。「これは宇宙を救うだけの物語じゃない。『君と僕は生涯を共に過ごすべきだ』と愛する女性を説得するミッションを描いた作品でもあるんだ」

ヴァレリアンと完全に対等なローレリーヌ役を得るために、カーラ・デルヴィーニュは厳しいオーディションを勝ち抜いた。「カーラのことはモデル時代から知っていた。まず彼女が本気かどうか確かめることが大事だった」と、ベッソンは言う。幼稚園に入る直前に女優になると宣言していたデルヴィーニュはこう振り返る。「リュックには演劇学校でやるようなテストを受けさせられたわ。動物になってみて、とかそういう類のテストよ。昔ながらの方法だけど、すごくクールだったわ」

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壮大な冒険を支えるキャスト

自由に姿を変えられるエイリアンのバブル役にベッソンが考えていたのが、ポップス界の世界的スター、リアーナだった。「無理だからあきらめろとみんなに言われたよ。でも僕は『聞いてみるのはタダだ』って言ったんだ」とベッソンは語る。「当然のことながら、リアーナはカメラを怖がらないし、いつも何千もの人たちを前に歌っている。でも彼女はこう言ったんだ。『私は演技では初心者だから、優秀な人と一緒に仕事をしない限り、何も学べないのよ』ってね。彼女の率直さに感動したよ」

「外見を次々と変えてゆくのはすごく楽しかった」とリアーナは言う。「メイクもヘアも何度も変えたの。一番時間がかかったのはクレオパトラね。でも私が一番気に入ったのはナースの衣装よ。ラテックスで出来ていたから汗だくになったけどね。リュックは私がちょっとでも気に入らないことがあるときには、私の意見を受け入れてくれた。私がバブルを好きになってバブルになりきることを彼は望んでいたからよ。彼は辛抱強くて、自分が望んでいる演技を引き出す方法をちゃんとわかっているのよ」

バブルの客引き係、ジョリーを演じたイーサン・ホークはベッソンから受けた説明について語る。「リュックから言われたんだ。もしデニス・ホッパーが生きていたら、ジョリー役には彼をキャスティングしていただろうって。それが僕の出発点になった」と、ホークは笑う。「僕の内面にあるデニス・ホッパーと交信しながら楽しんで演技したよ」

ベッソンが国防大臣役に声をかけたのは、13歳の時からずっとその音楽に魅了されてきたハービー・ハンコックだった。「ほんの端役だけど、『ヴァレリアン~』で大臣を演じるというのが気に入った」とジャズ界のレジェンド、ハンコックは言う。「この6年間、僕はユネスコの親善大使を務めてきたから、グローバルな視点を世に広める作品に参加したいと思ったんだ。ここまで人類が発展してきた21世紀においては、人間が地球市民を目指すことが大切なんだ」

ベッソンは、自身が深いつながりを持つフランスの映画コミュニティにも敬意を表し、監督仲間を通行人役で登場させた。ルイ・レテリエ(『インクレディブル・ハルク』)、ブノワ・ジャコー(『マリー・アントワネットに別れをつげて』)、そしてオリヴィエ・メガトン(『96時間/リベンジ』)の3人が軍人役で顔を見せている。

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銀河の多種多様な生き物たち

「千の惑星の都市」とも呼ばれる宇宙ステーション“アルファ”には、銀河中からやってきた何千種もの生き物がいる。その多くは原作で確立された神話に根差している。彼らをデザインする上で主な役割を果たしたのが、『LUCY/ルーシー』や『ホビット』シリーズに携わってきたコンセプト・アーティストのベン・マウロ。ビデオゲーム・アーティストの新川洋司と伝説的バンド・デシネ作家のメビウスからインスピレーションを得つつ、現実の動物生理学に基づいて宇宙時代の生き物たちをデザインしていった。「現実のサイや象を観察したよ。生物学の仕組みを理解してしまえば、その根底にある法則をまったく違うものに変えることができるんだ」

早い段階からファンの関心を高めるユニークな方法として、ベッソンはクリエイティブ系クラウドソーシングを活用してSFファンにエイリアンのデザイン画を提出するよう呼びかけた。コンテストには世界中から3,000件以上の応募が集まり、20ほどのデザインが実際に映画の中に登場している。

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大胆な新世界、本作の視覚効果

銀河系の奇想天外なロケーションで繰り広げられるアクションを統括する野心的な視覚効果スーパーバイザーを求めて、べッソンはアカデミー賞に輝くスコット・ストクダイクに会いに行った。「スコットは10分もたたないうちにいろいろな課題について解決策を見出し始めていた」と振り返る。

ストクダイクはシーン毎の必要要件を検討することから着手した。「各ショットのストーリーボードをよく観察して、どんなエイリアンが何人いるか、ショットの長さはどのくらいか、どんな動きがあるのかを見極めていったんだ」

ニュージーランドのウェタ・デジタル社、特殊効果の名門ILM、そして『LUCY/ルーシー』のカーチェイスシーンを手がけたモントリオールのロデオFX社が力を合わせて2,734もの視覚効果ショットを作り上げた。「この作品を、ニューヨークの警官コンビの物語のように撮影したい、と言ったんだ」と、ベッソンは言う。「ブルースクリーンが云々といったことは聞きたくなかった。事前に宇宙船や宇宙ステーションやエイリアンたちの姿をちゃんと見たかったんだ。そうすることで、その場面で何が起きているのか完全にわかった上で、カメラを肩に担ぐことができたよ」

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シテ・ドゥ・シネマでの撮影

ベッソンは3年を費やしてアーティスト、イラストレーター、デザイナーたちとコンセプトアートを固め、さらに1年半かけてディテールに富んだストーリーボードを作成した。

撮影は2016年1月5日に始まり、6月に終了した。ベッソンは「僕は長距離ランナーで、長期間の撮影には慣れている」と話す。「『グラン・ブルー』では水中撮影に24週間、地上での撮影に22週間かけたし、『ジャンヌ・ダルク』も24週間かかった。『ヴァレリアン~』での100日間は楽に思えたくらいだよ」

本作の撮影はすべて、パリ郊外にあるベッソンのスタジオ「シテ・ドゥ・シネマ」で行われている。2012年にベッソンが共同設立したこの施設は、ローマのチネチッタやイギリスのパインウッド・スタジオと競合するフランス最大の映画複合施設だ。ベッソン自身が立案し、65エーカーの敷地に9つのサウンドステージ、さらに3つの映画学校とレストランと保育所がある。

9つあるサウンドステージのうち7つが『ヴァレリアン~』で占められ、スタジオは常に活気に満ちていた。「たとえ同じサウンドステージにいなくても、全員が同じ考えを持って、同じ場所にいられたおかげで、理想的なコラボレーションが実現した」と製作のヴィルジニー・ベッソン=シラは言う。

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ビジョンを共有した腕利きのチーム

チームのコアメンバーはベッソンと長らくコラボしてきた衣装デザイナー、オリヴィエ・ベリオ、撮影監督のティエリー・アルボガスト、そしてプロダクション・デザイナーのユーグ・ティサンディエの3人だ。

ティサンディエは巨大なセットをいくつもデザインし、1970年代から2740年までのすべての時代の息吹を吹き込むことに挑んだ。

クランクインの7カ月前から作業を開始したベリオは、「今回の宇宙服は、原作よりも機能性とファッション性を兼ね備えたスーパースーツにしなければならなかった」と言う。「ダイビングスーツのように滑らかだけど、実際にはメタリックペイントを塗った発泡体なんだ。固い部分はエポキシ樹脂でできていて、ウエストの部分はできるだけ細く、シルエットも美しい形をしているんだ」

デルヴィーニュは「あんなに沢山自撮りをしたのは初めてよ」と宇宙服を絶賛。「世界中で一番クールな衣装だったわ。ウェットスーツにプラスチックを縫い付けて作られていたんだけど、見た目がものすごくかっこいいの」

アルボガストは1990年の『ニキータ』以来、一作を除きすべてのベッソン作品で撮影監督を務めてきた。ベッソンは自身でカメラを操作し、アルボガストに照明の調整を一任する。アルボガストは照明のコンセプトについて「シーン毎に光が違うとシーン同士を衝突させることができる。日の光あふれるビーチのシーンからいきなりイントルーダー(ヴァレリアンたちが乗る宇宙船)のブルーの世界に入るとか、そういう光の多様性が好きなんだ」と語っている。

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名作曲家と古今の名曲がドッキング

観客を、異星生物たちが暮らすはるかかなたの宇宙へと誘う音楽を手掛けたのは、アカデミー作品賞受賞作『アルゴ』や『王様のスピーチ』など、数々の名作で知られるアレクサンドル・デスプラだ。しかもフランス育ちのデスプラは10代の頃は雑誌「ピロット」の愛読者で、原作に対する深い理解があった。

ベッソンはメロディを多用した管弦楽的スコアをリクエスト。デスプラは、SFに求められるサウンドを多様化させるチャンスだと感じたという。「この映画には、この映画独自の声があるからね」

さらにベッソンは既存曲や今回新たにレコーディングした楽曲も使った。1975年のアポロ号とソユーズのドッキング映像から始まる冒頭のシークエンスではデヴィッド・ボウイの“Space Oddity”が、その他ボブ・マーレイの“Jamming”、ワイクリフ・ジョンとレフュジー・オール・スターズによるビージースの名曲“Stayin’ Alive”、エンドクレジット用にはAlexianeの“A Million On My Soul”と、ファレル・ウィリアムスがプロデュースし、カーラ・デルヴィーニュが歌う“I Feel Everything”などが使われている。

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